幼い記憶の見るマンガ

幼い頃、貸本屋をしていたという叔母の家に行くと廃業した後もそのまま漫画本が並んでいました。
その家に行く度読み漁っていたのですが、今思えば凄まじいラインナップでした。
山川惣治氏の「少年ケニヤ」やら少女向け単行本シリーズ、とある大御所の単行本デビュー作、とある大御所ホラー作家の初期ハードボイルド作品。
etcetc、何でもかんでも置いてありました。
いくらでも持って帰っていいと言われ、時々何冊か選んで持って帰った内田。
しかし、ある時私は全くメンテナンスされずボロボロになったその本の数々に見切りをつけてしまったのです。

至って真剣に、もとい深刻な表情でバケツを持って立たされる主人公。
空を仰いで陥った境遇に絶望する主人公がアオリで大きく描かれ、それをまた影から見守りつつ涙するヒロイン。
場所は校庭の大樹の下、クライマックスに相応しく。
屈辱を受けて涙するという表現は真面目に捉えるべきシーンだったのにも関わらず、笑わずにはいられなかったそれ。
姉とふたリ大喜びでツッコミ入れてましたっけ。
そのインパクトにあれだけ笑わせてもらったというのに何故捨ててしまったのか。
それどころか持って帰るべき本ならもっと沢山あったじゃないかと、先に立たない後悔を噛み締める内田。

その中で特に印象深い作家さんがいました。
失礼ながら好きな絵どころか私の悪夢の原点のような、なんとも忘れがたい作家さんです。
しかし現在検索を掛けてもほとんど出て来ません。
勘違いでなければ池上伸一さんという方で、ホラー漫画の作家さんの中では比較的「コワくない」絵柄の方でした。
ホラー漫画として狙っているのにドン引き要素が少なく、それでいて何やら忌まわしさだけは満点の絵柄。
その作品の中に「なんか怖い」印象だけはあるもののホラージャンルであると明確に規定されない物語があって、忘れられない理由の根源になっているのです。
その理由は後にうっすら理解できました。
なぜならその作品は私が幼い頃から繰り返し見てきた大好きな映画、「わんぱく戦争」をベースにしていたからです。
あまりにも映画の印象とかけ離れた絵で表現された子供の世界。
それは禍々しいイメージを放っていました。
しかし、子供の持つ世界のとてつもない真剣さ、敗北が意味する喪失の大きさは同様に感じ取ることが出来たのです。

再びあの感覚を体験したらがっかりして気が抜けてしまうのでしょうか。
あるいは同じ衝撃に出会えるのでしょうか。

追記: GTAさんよりお名前は池上伸一さんではなく池川伸一さんであるというご指摘を頂きました。
もう一つ覚えのある池川伸治さんの検索も合わせ私の探していた作品にはまだ辿り着けませんが、まずはもやもやが晴れてすっきり致しました。
ありがとうございました。